オルソ画像とは何か

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オルソ画像とは、上空から撮影した写真(航空写真)のゆがみ・ひずみを補正した画像のことです。正確な地形情報が反映されており、高精度なデータが求められるシーンで利用されています。
一般的な航空写真は、画像と対象物の間にひずみが生じるため、像が歪んでしまうことも珍しくありません。そのままでは精度が低いため、正確性が求められる用途には適していないのです。
一方、オルソ画像は航空写真のひずみなどが補正されています。航空写真を真上から撮影したような写真へと変換(正射変換)するため、より実態に近い地形を把握することが可能です。
オルソ画像の特徴
通常の航空写真は一点透視図法(中心投影)で写されるため、地形の起伏や撮影高度の違いにより位置ズレが生じます。オルソ画像は、数値標高モデル(DEM/DSM)と外部標定要素(GNSS・IMU)を用いて各ピクセルの座標を補正し、すべての地点を同一スケールで表現します。これにより、都市計画図や用地台帳などと重ねても位置がずれません。
オルソ画像と通常の航空写真・衛星写真の違い
- 航空写真:高解像度だが歪みを含む
- 衛星写真:広域を一度に撮影できるが、分解能や雲量の影響を受けやすい
- オルソ画像:航空写真の解像度と衛星画像並みの位置精度を両立し、GISでそのまま計測・解析できる
「ひずみが無い」とは何か
正射投影によって建物の側面視が排除され、ビルの頂部と基底部が同一垂直線上に揃います。高層ビルが倒れ込んで写ることもなく、実際の地図座標と一致するため「ひずみが無い」と表現されます。
オルソ画像を取得・作成する方法
オルソ画像は、主に以下のステップで作成されます。
元となる画像を撮影する
最初に行われるのが元となる航空写真の撮影です。オルソ画像には精度が求められるため、多数の航空写真を撮影しなくてはいけません。従来の手法では、上空からの撮影に航空機が用いられていましたが、現在ではドローンを用いた航空写真の撮影も普及しています。ドローンの場合、コストを抑えながら短時間で広範囲を撮影可能です。
標定点を設置する
ドローンなどによる航空写真の撮影と合わせて行われるのが標定点の設置です。標定点は、航空写真における基準となるもので、水平位置と高さを付与する役割を担っています。生成されるオルソ画像の精度にも関わるため、オルソ画像の作成には必要不可欠な作業です。
標定点は、主に下記の方法で決められます。
- 地上に標識やマーカーを設置する
- マンホールや白線など判別しやすいものを選び、現地でGNSS測量を実施する
どちらを採用するかは個々のケースによりけりです。
撮影区域を補正(同時調整)する
航空写真を撮影した後は、撮影区域の同時調整を実施します。同時調整とは、撮影区域における複数のデータをまとめて計算する作業のことです。撮影した航空写真はもちろん、標定点やGNSS/IMU装置で計測した外部の標定要素などを統合してデータを調整します。
オルソ画像は高い精度が求められるため、航空写真撮影後の同時調整が欠かせません。同時調整を行わないと、データに大きなズレが生じるおそれがあります。
数値標高モデルからオルソ画像を作成する
同時調整が完了したら、最後に行うのが数値標高モデル(DEM)の作成です。複数の航空写真や複数の計測点データを使うことで、等間隔に標高を表したDEMを作成できます。そしてDEMを用いた正射変換を経て完成するのがオルソ画像です。オルソ画像を作成する際は、複数の正射変換された画像が用いられます。
オルソ画像と GIS の連携活用
GIS ソフトウェアでのオルソ画像編集・解析
QGISの「Georeferencer」やArcGIS Proの「オルソマッピング ツールセット」を使えば、コントロールポイント登録→補正→モザイクまでクリック操作で完了します。LiDAR点群と重ねることで路面高さや土量計算も自動化できます。
ハザードマップへの適用事例
国土地理院の「重ねるハザードマップ」では、浸水想定区域をオルソ画像の上に重ね、住民が自宅周辺の高低差を視覚的に確認できるようにしています。
その他の業務システムとの統合
資産管理(EAM)やSCADAと連携し、ポールやマンホールの座標と写真をダッシュボードで一元管理する事例が増えています。
正射投影のメリット
通常写真との比較
歪み補正前後を並べると、道路中心線が揃い、ビル影も最小化されるため、図上距離がそのまま現地距離として使えます。
Google マップを簡易オルソ画像として利用する方法
ブラウザで衛星モードをキャプチャし、QGISでEPSG:3857に設定すれば簡易オルソとして流用可能です。ただし商用ライセンスと測地系の誤差に注意しましょう。
航空写真測量からドローン測量に移行する理由
コストと時間の最適化
機材レンタル費・フライト許可手続きが小規模で済み、同一面積あたり最大1/5の費用で撮影できます。
安全性の向上
人が入りにくい法面や災害直後の現場でも、オペレーターは安全圏から操作可能です。
解像度と頻度の両立
地上解像度2cm/pixel程度を週次で更新できるため、進捗管理や出来高評価に最適です。
自動化ワークフロー
フライトプラン作成→自動離陸→クラウド処理→GIS連携までAPI連動で一気通貫化できます。
オルソ画像の用途・活用方法
オルソ画像は、主に以下の用途で活用されています。
- 地形の調査や確認に
- 写真測量に
- 3Dモデルの作成に
- ハザードマップの作成に
特に広く活用されているのが地形の調査・確認です。オルソ画像を利用することで、造成や建設工事に必要な地形の状態を簡単に確認できます。オルソ画像は高いデータ精度を有しているため、写真測量での活用も可能です。
また、3Dモデルの作成にもオルソ画像が利用されています。オルソ画像をから点群データを作成すれば、撮影区域を立体的に表現可能です。なお、3Dモデルは災害発生現場の状態確認などに用いられています。
ハザードマップの作成でもオルソ画像が使われています。オルソ画像からは正確な地形のデータが得られるため、災害の発生リスクの評価や被害のシミュレーションなどにも活用可能です。
オルソ画像作成に役立つツール・ソフトウェア
オープンソースツール(OpenDroneMap・MicMacなど)
- OpenDroneMap:--fast-orthophotoオプションで点群生成をスキップし、低コストPCでも数百枚を処理可能です。
- MicMac:フランスCNES開発。コマンドを組むだけでサブピクセル精度のマッチングを自動化できます。
商用ソフトウェアの特徴
- Agisoft Metashape:Professional版は約40万円。Pythonスクリプトでバッチ処理を組め、公共測量成果にも対応。
- Pix4D Mapper:年間サブスク型。オルソモザイクエディタでシームライン編集がGUIで可能。
クラウドサービスの特徴
- DroneDeploy:RTKデータを自動取り込み、完了後はURL共有だけで発注者と確認できます。
- Propeller Cloud:大規模土木現場向けに、1km²超でも24時間以内でオルソと体積計算レポートを納品します。
本メディア監修の柳土木設計事務所では、測量士/土地家屋調査士が、各分野の専門家と連携し
ドローン測量による境界確定から登記申請にも対応しています。