ドローン測量で使うRTKの基礎と運用の注意点

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ドローン測量は短時間で地形を把握できますが、誤差管理を誤ると成果が揺れます。基準局とリアルタイム補正を使うRTKで単独測位の誤差を抑え、品質を安定させます。この記事はドローン測量でRTKを使いこなすための基礎と対策を解説します。

GNSSとGPSの違いを押さえる

GNSSは人工衛星測位システムの総称で、GPSはその一つです。GNSSには米国のGPSのほか、ロシアのGLONASS、欧州のGalileo、中国のBDSなどがあり、複数の衛星群を組み合わせて受信すると、空の見通しが悪い環境でも測位が安定しやすくなります。単独測位はおおむね数メートルの誤差が残る一方、相対測位は基準局と同時観測して誤差要因を打ち消すため、センチメートル級の精度に近づきます。ドローン測量でRTKを使う前提として、この「単独測位」と「相対測位」の違いが理解の土台になります。

参照元:国土地理院(https://www.gsi.go.jp/denshi/denshi45009.html)

GNSSの限界とドローン測量で起きやすい誤差

電離圏・対流圏による電波遅延、衛星軌道や時計の誤差、マルチパス(反射)などは単独測位で顕在化します。市街地のビル陰や法面近くの斜面では電波の反射が増え、垂直方向の誤差が大きくなりがちです。相対測位であっても基準局との距離が伸びるほど残差が増え、固定解の維持が難しくなります。これらの限界を補う現実解が、RTKやネットワークRTKの活用です。

参照元:国土地理院(https://www.gsi.go.jp/denshi/denshi45009.html)

RTK技術とは?ドローン測量での仕組みとメリット

RTKはReal Time Kinematicの略で、既知点に置いた基準局の位相データを移動局にリアルタイム伝送し、移動局の生データと同時解を行う仕組みです。基準局のデータは無線やインターネット経由で送られ、誤差要因を打ち消すことでセンチメートル級の位置決定が可能になります。ドローンにRTK受信機を載せ、カメラの撮影位置に精度ラベルを持たせられるため、写真測量の後工程で地上基準点の数を抑えつつ、成果の座標品質を高めやすくなります。

参照元:国土地理院(https://www.gsi.go.jp/denshi/denshi45009.html)

RTKのメリットを現場目線で整理する

RTKはカメラ位置の精度をリアルタイムに引き上げるため、地物の高さ誤差が蓄積しづらく、後処理での補正作業を軽減できます。平坦で遮蔽物の少ない圃場や造成地では固定解の維持率が高く、飛行時間に対して効率的なデータ取得ができます。適切な環境では、グラウンドコントロールポイントを大幅に減らしても実用精度を満たす結果が得られます。

参照元:Pix4D(https://www.pix4d.com/jp/blog/rtk-ppk-drones-gcp-comparison/)

RTKで広域や遠距離に強くなる「ネットワークRTK」

ネットワークRTKは、国土地理院の電子基準点網など広域の基準点群から生成した補正情報を用いて、長い基線距離でも安定した精度を確保する方法です。リアルタイムの基準点データは配信機関を介して提供され、現場ではNtripというプロトコルで受け取ります。自前の基準局設置が難しい現場でも、携帯回線が届けば運用できるのが利点です。

参照元:国土地理院(https://www.gsi.go.jp/denshi/denshi_geonet_realtime-data.html)

RTKを使うことでできること:ドローン測量の具体例

造成計画に向けた等高線生成、出来形管理の体積算出、農地の不陸把握、堤体や法面の変状監視などで、RTKは撮影点群の座標信頼性を底上げします。平坦な圃場のように遮蔽物が少ない環境では固定解の維持率が高く、チェックポイントで数センチの誤差に収まる事例が多数あります。一方、市街地のように遮蔽や反射が多い環境では、固定解の割合が下がる傾向があり、運用対策や後処理の補強が有効です。

参照元:Pix4D(https://www.pix4d.com/jp/blog/rtk-ppk-drones-gcp-comparison/)

RTKとPPKの比較:使い分けの考え方

RTKは現場で即時に精度がわかり、GCPの設置数を抑えやすい一方、通信遮断やマルチパスで固定解を落とすと成果にムラが出やすくなります。PPKは飛行後に基準局データを使って再演算するため、通信断に強く、都市部や遮蔽環境で安定した結果を出しやすい側面があります。現場で固定解の維持率が高く見込めるならRTK、遮蔽が多いならPPKで補うという組み合わせが現実的です。

参照元:Lefixea LRTK(https://www.lrtk.lefixea.com/blog-rtk-19/019)

ドローンでRTKを活用する際の注意点と対策

RTKは基準局・通信・運用の三つでつまずきやすいです。基準局は既知点の座標品質と設置環境が要で、アンテナ周囲の見通しを確保し、機体離陸点や撮影範囲に対して基線長を短く保つと固定解が安定します。通信はNtripの接続品質に左右されるため、現場の携帯電波の事前確認、別回線のテザリング準備、ログイン情報の事前検証が欠かせません。運用では、磁気干渉や離着陸時の遮蔽、飛行高度やオーバーラップ率、雲量や低太陽高度による写り込みなど、写真測量の基本条件も品質に直結します。固定解が落ちた区間は、PPKで補正する、GCPを限定配置して検証点を取る、近接高度で短い補完フライトを差し込むといった再現性のある手当てが効果的です。

参照元:Lefixea LRTK(https://www.lrtk.lefixea.com/blog-rtk-d8/008)

基準局運用とネットワークRTKの実務ポイント

自営の基準局を使う場合は、三脚の整準と器械高の記録、既知座標の検証、周囲の反射源回避が基本です。ネットワークRTKを使う場合は、契約した配信サービスの送信マウントポイントを機体側に正しく設定し、Ntripのユーザー名とパスワードの入力ミスを避けます。屋外では日射や風で端末が不意に落ちないよう機器固定も点検します。現場の電波が不安定な地点では、短時間で分割飛行し、各ソーティーの開始時に固定解を必ず確認すると失敗を減らせます。

参照元:日本測量協会(https://www.jsurvey.jp/data.htm)

NtripとVRSの基礎を短くおさえる

NtripはGNSS補正データをインターネット経由で配信するための通信方式で、VRSは複数の電子基準点から仮想基準点を生成して誤差を補正する考え方です。自営無線が不要なため準備が軽く、地方の現場でも携帯回線が届けば運用できます。

参照元:アカサカテック(https://www.akasakatec.com/blog/4920/)

機材選定の視点:RTK対応ドローンと基準局

機体側はGNSSマルチバンド対応のRTKモジュールを備え、地上は自営の基準局か、ネットワークRTKの受信が可能な構成が必要です。メーカー純正の移動基地局は屋外設置や携行性に配慮した設計で、運搬や電源管理の段取りを減らせます。PPKを併用する場合は、生データ(RINEX等)のログ取得可否と処理ソフトのワークフローまで含めて確認しておくと、現場での選択肢が広がります。

参照元:DJI(https://www.dji.com/jp/d-rtk/info)

フライト前チェックとトラブル時の復旧手順

現場到着後は、天候と電波状況、ファームウェアとNtrip設定、基準局の既知点検証、テストホバリング中の固定解の有無を順に確認します。固定解が得られない場合は、アンテナの見通しを確保する、基準局の位置を変える、飛行高度を調整する、ネットワークRTKのマウントポイントを変更する、といった単純で効果の大きい手から試します。どうしても固定解が安定しない場合は、PPKを見越してログを確実に取得し、検証用のチェックポイントを撮っておくことで、後工程での軌道修正がしやすくなります。

参照元:Drogger Tech(https://drogger.hatenadiary.jp/entry/RTK_GUIDE)

ドローン測量におけるRTKの未来

電子基準点のリアルタイム配信整備や通信キャリアの高精度測位サービスの普及で、ネットワークRTKはより身近になっています。現場では、RTKで取得した精度情報をそのままクラウドに連携し、点群やオルソの品質検証まで自動化する流れがはっきりしてきました。固定解の維持率を現場で見える化し、必要な区画のみ追加撮影する運用が一般化すると、無駄な再測の削減とリードタイム短縮につながります。

参照元:国土地理院(https://www.gsi.go.jp/denshi/denshi_geonet_realtime-data.html)

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柳⼟⽊設計事務所は、ドローン事業をはじめ、土木設計や不動産登記などを手がけている会社です。
測量士・土地家屋調査士の資格を持つ栁 和樹代表は、早期から「ドローン測量に可能性」を見出し、研究から携わっています。長く測量に携わってきたノウハウを生かし、撮影技術の確立や測量データの収集など、ドローン測量を実用化するために飛行方法や解析ソフトの手法も大手メーカーと協力し、ドローン測量業務を確立してきました。
これまでに、さまざまな企業・自治体との実績を通じて、豊富なノウハウを持っており、高クオリティのドローン測量を提供。全国各地の専門家や同業者とも連携して、幅広い要望に対応しています。

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引用元URL:柳⼟⽊設計事務所公式HP (https://y-dssc.com/)
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