発注書や仕様書に「i-Construction」と書かれていると、測量も三次元データ前提で考える場面が増えます。そこでドローン測量を検討しても、成果物の形式や座標の扱い、精度の考え方が揃わないまま進むと、納品後に確認が止まりやすくなります。
発注者として進めやすくするコツは、機体や撮影条件の話に入る前に、「何に使うデータか」と「受け取り条件」を言葉にしておくことです。目的が決まれば、必要な成果物と検査の考え方が自然に定まっていきます。
この記事では、i-Constructionにおけるドローン測量を発注者向けに、要件整理と受け取り条件の決め方を解説します。
そもそも国土交通省が進めるi-Constructionとは
i-Constructionは、建設現場でICTを活用し、建設生産システム全体の生産性向上を図る取り組みです。発注者の立場では、測量から設計、施工、検査、維持管理までの流れを「データでつなぐ」前提が強まり、成果物の受け取り条件を曖昧にしないことが重要になります。
i-Constructionが進む背景
背景には、担い手不足や災害対応などにより、限られた人員でも安全と品質を保ちながら事業を進める必要性が高まっていることがあります。国土交通省はi-Constructionの取り組みを進め、建設現場の省人化を見据えた「i-Construction 2.0」も取りまとめています。発注者にとっては、こうした流れの中で「データを受け取り、説明できる状態で残す」ことの比重が上がりやすい点がポイントです。
参照元:国土交通省公式HP(https://www.mlit.go.jp/report/press/kanbo08_hh_001085.html)
従来の進め方と比べて何が変わる
従来は、平面図や断面図、帳票を中心に確認する場面が多く、成果物も「図面一式」でまとまりやすい傾向がありました。三次元データの活用が前提になると、画像、点群、三次元モデルなど成果物が広がり、座標や標高の前提、検査の手順、電子納品の構成まで含めて揃える必要が出てきます。発注者がここを先に整えると、納品後の確認が進みやすくなります。
i-Constructionのメリットを発注者の言葉に直す
i-Constructionは、生産性向上を軸に、建設プロセス全体でICTを活用する考え方です。発注者の実務で効きやすいのは、関係者間の認識を揃えやすくなることと、検査や協議の根拠を残しやすくなることです。反対に、成果物が「見られる形になっていない」「前提が揃っていない」状態だと、効果が出にくくなります。発注段階で目的と受け取り条件をセットで決めることが、結果的に調整の負担を小さくします。
参照元:国土交通省公式HP(https://www.mlit.go.jp/tec/i-construction/index.html)
i-Constructionで測量の発注が変わりやすい理由
i-Constructionでは、調査・測量から設計、施工、検査、維持管理までの各段階で三次元データ等を導入する考え方が示されています。そのため、測量の発注でも「何を納品してもらい、どこで使うのか」を先に揃えないと、後工程での使い方が定まらず、手戻りが起きやすくなります。
参照元:国土交通省公式HP(https://www.mlit.go.jp/common/001137123.pdf)
成果物が図面中心からデータ中心に広がる
発注者が受け取る成果物は、図面だけでなく、オルソ画像や点群などのデータが加わりやすくなります。受け取り側のPC環境や運用ルールによっては、データが開けずに確認が止まることもあります。発注時点で提出形式や提出単位、閲覧方法まで含めて決めると、納品後に困りにくくなります。
要領・基準の採用方針があると発注が安定しやすい
i-Constructionの関連領域では、「ICTの全面的な活用」に関する要領類が整理されています。発注者としては、案件の条件に合わせて、準拠する要領・基準や運用方針を先に固定すると、精度や検査の会話が噛み合いやすくなります。
i-Constructionにおけるドローン測量とは
一般に「ドローン測量」と呼ばれるものは、無人航空機(UAV)で撮影・計測し、解析して三次元データを作る方法を指します。国土地理院は、UAVで撮影した空中写真を用いる公共測量について、精度確保のための基準や作業手順等を示しています。発注者としては、手法の呼び方よりも、「目的に対して、どの成果物を、どの前提で受け取るか」を揃えることが重要です。
起工測量でのドローン測量は現況共有に向く
着工前の現況把握では、広い範囲を短時間で把握したいニーズが出やすく、UAVによる写真測量は相性が良い場面があります。発注時には、対象範囲を図面で示すだけでなく、現場で判断しやすい境界の考え方や、樹木や水面など三次元化が難しい場所をどう扱うかまで言葉にしておくと、納品後のすれ違いを減らしやすくなります。
出来形管理でのドローン測量は検査で説明できる形が大切
出来形は、設計どおりかを確認し、検査や協議で説明できることが重要です。空中写真測量(UAV)を用いた出来形管理の要領では、UAVで撮影し、写真測量用ソフトウェアで数値化し、三次元CAD等で出来形を面的に把握して出来形数量等を算出する流れが示されています。発注者は、比較に使う設計データや確認方法を先に決めておくと、納品後の判断が進めやすくなります。
発注者が決めるべき成果物と受け取り条件
発注者にとって成果物は「納品されたか」より「使える状態か」が大切です。ここでは、発注で指定しやすい代表的な成果物と、受け取り条件を整理します。
オルソ画像は現況の共有資料として使いやすい
オルソ画像は、空中写真を位置関係が分かりやすい形に整えた画像で、発注者側でも直感的に理解しやすいことがあります。現況の説明や関係者共有で役立ちやすい一方、画像だけでは高さ情報が分かりにくいため、出来形や土量まで扱うなら、点群など高さ情報を持つ成果物とセットで考えるのが安全です。
点群は高さを含む三次元の基本データ
点群は、位置と高さを持つ点の集まりで、地形や構造物の形を三次元で表現します。出来形確認や土量算出など、高さ情報が必要な用途で中心になります。いっぽうでデータ量が大きくなりやすく、受け取り側の閲覧環境で扱いづらいことがあります。発注時に、提出形式、提出単位、閲覧方法、必要に応じた軽量データの提出まで依頼しておくと、確認が進めやすくなります。
三次元地形モデルは断面や体積計算につなげやすい
三次元地形モデルは、点群などから地形を面として扱える形に整えたデータを指すことが多く、断面作成や体積計算につなげやすい場面があります。点群だけで足りるのか、地形モデルまで必要なのかは、用途によって変わります。発注者は「どの成果物で最終判断するか」を決めておくと、納品物の過不足が起こりにくくなります。
作業記録と品質評価資料は説明責任の土台になる
発注者が説明しやすいのは、成果物だけでなく「どう作ったか」が残っている状態です。撮影日、対象範囲、天候、地上基準点の扱い、処理条件などが揃っていると、検査や協議で根拠を示しやすくなります。国土地理院のUAV公共測量マニュアルは、精度確保のための基準や作業手順等を示しており、何を記録として残すべきかを考える際の参考になります。
精度と品質評価の考え方を発注者向けに整理
精度は高いほど良い、と考えると発注が難しくなりがちです。発注者が求めたいのは「目的に対して説明できる精度」であり、現場条件、工期、予算とのバランスで決まります。ここでは、受注者と会話しやすくなる観点で整理します。
精度は用途と検査方法で決める
起工測量では、現況把握と共有が主目的になりやすく、広さと分かりやすさが効きます。出来形管理では、設計との比較や検査で説明できることが主目的になり、比較の基準と手順が重要になります。どの用途で使うのかを先に決めると、精度の会話が進めやすくなります。
地上基準点の扱いを曖昧にしない
写真測量では、地上側の基準となる点の扱いが、成果物の説明可能性に影響します。発注者として大切なのは呼び方ではなく、どの点を何の目的で置き、どのように品質評価に使うのかを、目的とセットで揃えることです。ここが曖昧だと、納品後に品質の説明が難しくなることがあります。
座標系と標高基準を揃えると比較が進みやすい
三次元データは、座標系と標高基準が揃っていないと、既存図面や他工区データと重ならず、比較や検査が進みません。発注者側が「座標と標高の前提」を明確にするだけで、納品後の混乱を減らしやすくなります。公共測量として実施する場合の考え方も含め、国土地理院の整理を参照しながら前提を固定すると進めやすいです。
仕様書に書くと伝わりやすい発注項目
発注者が書くべき項目は、撮影設定の細かい数値を並べることではなく、成果物が「使える状態」になる条件を揃えることです。ここでは、仕様書に落としやすい観点でまとめます。
参照元:国土交通省公式HP(https://www.mlit.go.jp/tec/constplan/sosei_constplan_tk_000051.html)
対象範囲と除外条件を明文化する
対象範囲は図面で示すだけでなく、現場で判断できる境界の考え方も併せて書くと、受注者側の解釈が揃いやすくなります。仮設ヤードや進入路を含めるか、立入できない場所があるか、樹木や水面など三次元化が難しい場所をどう扱うかまで書いておくと、納品後のすれ違いを減らしやすくなります。
無人航空機の飛行許可・承認と安全管理の役割分担を揃える
ドローンは、屋外で飛行させる際に許可・承認が必要となるケースがあります。発注者としては、受注者が必要な手続きを行うこと、現場の安全管理ルールに従うこと、飛行できない場合の協議手順まで、役割分担を明確にしておくとトラブルを抑えやすくなります。工程が詰まりやすい案件ほど、手続きと現場調整を早めに始められるように情報共有しておくと安心です。
参照元:国土交通省公式HP(https://www.mlit.go.jp/koku/koku_fr10_000042.html)
データ形式と納品構成を決めて受け取りを止めない
成果物の形式は、用途に合わせて選びます。そのうえで、提出形式、提出単位、ファイル構成、受け取り側が開ける環境を前提に、確認手順まで決めておくことが大切です。電子納品の枠組みを採用する場合は、準拠先と提出物の構成を明確にしておくと、納品時のやり取りを減らしやすくなります。
検査の方法と合否判断の考え方を先に決める
出来形の納品で困りやすいのは、点群やモデルはあるのに、どの基準で設計と比較し、どう合否判断するかが揃っていない状態です。発注者としては、比較に使う設計データ、確認する断面の考え方、提出してほしい根拠資料を、発注段階で固めておくと判断が進めやすくなります。
発注者がつまずきやすい点と予防策
発注者の悩みは、技術の難しさよりも「納品後に使えない」「確認が止まる」「追加対応が発生する」に集まりやすいです。ここでは、発注の言葉を少し整えるだけで避けやすい点を整理します。
納品データが開けずに確認が止まる
点群や三次元モデルはデータ量が大きく、受け取り側の端末や閲覧環境によっては開けないことがあります。発注時に、閲覧方法の提示、必要に応じた軽量版の提出、ファイル分割の考え方を依頼しておくと、受け取り確認を進めやすくなります。
参照元:国土交通省公式HP(https://www.cals-ed.go.jp/)
現場条件で撮影が延期になる
ドローン測量は、天候や現場の立入制限、周辺環境の制約の影響を受けます。発注者側で、立入制限、飛行できない時間帯、現場調整の窓口、撮影希望日と予備日の考え方を共有しておくと、段取りが組みやすくなります。飛行の許可・承認が必要な場合は、手続きの期間も含めて工程に織り込むことが大切です。
追加費用の火種は要件の曖昧さから生まれやすい
追加費用が発生しやすいのは、対象範囲が途中で変わる、成果物の形式が後から増える、品質評価の根拠が追加で必要になる、といった期待値のズレが原因になることが多いです。発注段階で、目的、対象範囲、成果物、座標の前提、検査の考え方を揃えておくと、追加対応の可能性を下げやすくなります。
参照元:国土地理院公式HP(https://www.gsi.go.jp/KOUKYOU/sokuryosidou41042.html)
まとめ
i-Constructionにおけるドローン測量は、飛行や機体の話に入る前に、目的と受け取り条件を決めることが要点になります。起工、出来形、土量、引き渡しのどこで使うかを定めると、必要な成果物と検査の考え方も定まりやすくなります。
仕様書では、対象範囲と除外条件、座標と標高の前提、成果物の形式と提出単位、検査の方法、電子納品の準拠先、飛行許可・承認と安全管理の役割分担を明確にしておくと、納品後に困りにくくなります。


