土地造成や起工測量、出来形確認などでドローン測量を発注するとき、発注者が確認したいのは「飛ばせるかどうか」だけではありません。実際には、飛行経路の下に第三者が入り込まないよう、現場をどう管理するかまで含めて安全計画が組まれているかが重要です。
このときに出てくるのが「立入管理措置」という考え方です。言葉だけ見ると難しく感じますが、要するに、ドローンの飛行経路下に通行人や近隣住民、関係のない車両などが入り込まないように管理する措置を指します。この記事では、ドローン測量の発注者向けに、立入管理措置の基本、どんな飛行で問題になりやすいのか、道路や家屋が絡む現場では何を確認すべきかを整理します。
2026年4月9日時点で公開されている国土交通省とDIPS2.0の資料をもとに整理していますが、制度や申請画面は更新されることがあるため、実際の運用時は最新の公式情報も確認してください。
ドローンの立入管理措置とは
立入管理措置とは、無人航空機の飛行経路下において、第三者の立入りを制限または管理する措置のことです。発注者の立場で言い換えると、「飛行中に関係のない人や車両が下に入らないよう、現場側でどう安全を担保するか」という設計だと考えると分かりやすくなります。
ドローン測量では、精度や撮影条件に目が向きがちですが、法令上は安全管理の設計も同じくらい重要です。特に人口集中地区、目視外飛行、人や物件から30mを確保しにくい現場などでは、立入管理措置の考え方がそのまま飛行カテゴリーや申請方法に関わってきます。
飛行カテゴリーとの関係
国土交通省は、無人航空機の飛行をリスクに応じてカテゴリーI、II、IIIに分類しています。立入管理措置が関係するのは主にカテゴリーIIとカテゴリーIIIです。
カテゴリーIIは、特定飛行に該当するものの、第三者の上空を飛行しないように、飛行経路下で立入管理措置を講じたうえで行う飛行です。一方、カテゴリーIIIは、そうした立入管理措置を講じず、第三者上空で特定飛行を行うものです。発注者が通常のドローン測量で想定するのは、多くの場合カテゴリーIIの範囲です。
つまり、測量会社が「今回はカテゴリーIIで進める」と説明する場合、その前提には「飛行経路下を第三者上空にしないための管理方法が設計されている」という意味が含まれます。
第三者とは誰を指すか
ここで重要なのが「第三者」の考え方です。国土交通省の資料では、無人航空機の飛行に直接的または間接的に関与していない者を第三者としています。操縦者や補助者はもちろん第三者ではありませんし、飛行目的を共有したうえで、飛行の安全に関する注意事項を理解し、その指示に従って行動する関係者は、条件を満たせば第三者に当たらないことがあります。
一方で、通行人、近隣住民、見学者、現場の目的に関与していない車両の運転者などは、原則として第三者です。発注者側の担当者も、ただ立ち会っているだけで安全上の役割や指示系統が整理されていない場合は、第三者とみなされる可能性があります。
また、立入管理措置が講じられていない家屋の上空は、そこから第三者が出てくる可能性があるため、第三者上空に含まれるという整理が示されています。家屋の真上を少し通るだけでも、単純に「人が見えていないから大丈夫」とは言えない点に注意が必要です。
立入管理措置が必要になりやすいのはどんな飛行か
発注者の目線では、「どんな現場でこの話が重要になるのか」を先に把握しておくと見積もりや工程の理解がしやすくなります。立入管理措置が問題になりやすいのは、航空法上の特定飛行に該当し、かつ飛行経路下の管理が必要になる場面です。
特定飛行の代表例
国土交通省の飛行許可・承認ポータルで案内されている特定飛行の代表例には、次のようなものがあります。
- 人口集中地区の上空での飛行
- 夜間飛行
- 目視外飛行
- 人または物件から30mの距離を確保できない飛行
- 空港周辺や地表・水面から150m以上の空域での飛行
- 催し場所上空での飛行
- 危険物輸送や物件投下
ドローン測量では、人口集中地区内の測量、構造物点検を伴う近接飛行、見通しの悪い現場での目視外飛行などが関係しやすくなります。発注者としては、単に「飛べるか」ではなく、「どの特定飛行に該当し、その結果どんな管理措置が必要になるか」を確認することが大切です。
許可・承認が不要になるケースもある
カテゴリーII飛行のうち、人口集中地区の上空、夜間、目視外、人または物件から30mの距離を取らない飛行で、総重量25kg未満の無人航空機を使う場合には、一定の条件を満たすことで許可・承認が不要になるケースがあります。なお、空港周辺、150m以上の空域、催し場所上空、危険物輸送、物件投下などはこの整理とは別に確認が必要です。
ただし、ここで誤解したくないのは、「許可・承認が不要になり得ること」と「立入管理措置が不要になること」は別だという点です。操縦者技能証明、機体認証、飛行マニュアルなどの条件を満たしていても、第三者を飛行経路下に入れない管理や、安全確保のための措置は引き続き必要です。
そのため発注者は、「今回は許可申請が不要です」という説明だけで安心せず、どの条件に基づいて不要になるのか、現場の管理はどう行うのかまで確認したほうが安全です。
レベル3.5飛行はどう考えるべきか
近年は「レベル3.5飛行なら立入管理措置が不要」と理解されることがありますが、2026年4月9日時点の国土交通省資料では、その理解は正確ではありません。
国土交通省は、レベル3.5飛行をカテゴリーII飛行、すなわちレベル3飛行の一形態として整理しています。そのうえで、従来のレベル3飛行で求められていた立入管理措置のうち、補助者の配置や看板による周知などを、機上カメラ等のデジタル技術で代替する考え方を示しています。つまり、補助者や看板の配置といった一部の方法が置き換わるのであって、立入管理の考え方自体がなくなるわけではありません。
また、レベル3.5飛行では、一定の要件を満たすことで道路や鉄道車両、船舶などの移動車両等の上空を一時的に横断できるようになっていますが、歩行者など第三者が飛行経路下に存在する状態での飛行が認められるわけではありません。発注者としては、「レベル3.5だから何でも飛べる」ではなく、「どの管理方法をどう代替しているのか」を確認する視点が重要です。
ドローンの立入管理措置の具体的な方法
立入管理措置は、単に一つの方法だけで行うとは限りません。現場条件によって、補助者、区画表示、事前周知、監視方法などを組み合わせて設計します。
補助者を配置して第三者の進入を監視する
もっとも分かりやすい方法の一つが、補助者を配置して、飛行範囲に第三者が立ち入らないよう監視し、必要に応じて口頭で注意喚起する体制です。特に道路際や住宅地隣接の現場では、飛行に集中する操縦者とは別に、地上側の状況を見る要員を置く意味が大きくなります。
発注者としては、見積もりや運航計画の中で、補助者の人数、配置位置、誰が何を見るのかまで整理されているかを確認すると、現場運用の具体性が見えやすくなります。
コーン、看板、フェンスなどで立入管理区画を明示する
国土交通省の資料では、塀やフェンス、看板、コーンなどを設置し、立入管理区画を明示して第三者の立入りを確実に制限できる場合は、補助者の配置に代えることができると整理されています。
ただし、単にコーンを置けばよいという話ではありません。歩行者が容易に入り込める場所なのか、車両の往来があるのか、周囲から区画が視認しやすいかなどによって、十分な措置かどうかは変わります。発注者としては、「何を置くか」ではなく、「それで本当に第三者の立入りを防げるか」を確認するほうが実務的です。
周辺関係者へ事前周知して当日の運航条件をそろえる
立入管理措置は現地当日の物理対策だけではありません。近隣住民、施設管理者、元請、下請、現場作業員などに対して、飛行時間帯や立入り禁止範囲、緊急時の連絡方法を事前に共有しておくことも重要です。
特に測量の発注案件では、現場に複数の事業者や作業員が出入りすることが少なくありません。このとき、現場にいる全員が自動的に「第三者ではない」わけではないため、飛行目的の共有や安全上の指示が適切に整理されているかも確認ポイントになります。
道路・鉄道・家屋が関わる現場での考え方
発注者が特に注意したいのは、飛行経路やその周辺に道路、鉄道、家屋が含まれるケースです。こうした要素がある現場では、立入管理措置の難易度が一段上がります。
道路が含まれる場合
道路が飛行経路下に入る現場では、歩行者、自転車、自動車など第三者が不意に入り込む可能性があります。そのため、通常のカテゴリーII飛行では、道路をまたぐ経路を安易に前提にせず、区画設定、補助者配置、時間帯調整、経路変更などを組み合わせて、第三者上空にならない運用ができるかを検討することになります。
一方、レベル3.5飛行では、一定の条件のもとで移動車両等の上空の一時的な横断がしやすくなる制度が設けられています。ただし、これは無条件で道路上空を飛べるという意味ではありません。機上カメラによる確認、技能証明、保険加入、事前調整などが前提であり、歩行者が飛行経路下に存在する状態は引き続き避ける必要があります。
発注者としては、「この現場は道路をまたぐのか」「またぐなら通常運用なのか、レベル3.5飛行の前提なのか」を確認すると、業者の説明の妥当性を判断しやすくなります。
鉄道が含まれる場合
鉄道が関わる現場は、道路以上に慎重な設計が求められます。列車は移動車両等に当たるため、レベル3.5飛行では一定条件下で一時的な横断がしやすくなる考え方がありますが、それでも通常の飛行よりリスクが高いことに変わりはありません。
また、鉄道近接の現場では、鉄道会社ごとに近接協議の内容や確認事項が異なるため、事前に問い合わせて条件を確認することが重要です。実務上は近接協議が必要になるケースが多いため、「鉄道近接だから飛べるか」ではなく、「どの条件で協議が必要になるのか」「必要な調整や周知は誰が担うのか」まで確認しておくと、後工程の認識違いを減らしやすくなります。説明が曖昧な場合は、経路そのものを見直したほうが安全なこともあります。
家屋が含まれる場合
家屋の上空も注意が必要です。DIPS2.0のQ&Aでは、立入管理措置が講じられていない家屋の上空は、家屋から第三者が出てくる可能性があるため第三者上空に含まれると整理されています。一方で、屋内や十分な強度を持つ覆いの下に第三者がいる場合は第三者上空に当たらない整理も示されていますが、覆いの外へ出た時点で第三者上空に当たり得ます。
つまり、住宅の真上を少し通るだけでも、無人地帯として単純に扱えるわけではありません。レベル3.5飛行では、一定の条件のもとで、第三者の出入りのない一時的な住宅等の上空飛行が可能となる考え方も示されていますが、これは通常の測量案件で自動的に使える前提ではなく、飛行条件や管理方法の確認が必要です。
発注者としては、「家屋上空を通る計画か」「第三者が出てくる可能性をどう評価したか」「経路変更や時間帯調整は検討したか」を確認しておくと、後からのトラブルを減らしやすくなります。
DIPS2.0では何を確認・設定するのか
ドローンの飛行許可・承認申請は、原則としてDIPS2.0で行います。発注者自身が操作することは多くありませんが、何が申請上の論点になるのかを知っておくと、業者への確認がしやすくなります。
基本の流れ
一般的には、機体登録を済ませたうえで、DIPS2.0で機体情報、操縦者情報、飛行目的、飛行日時、飛行経路などを入力して申請します。国土交通省は、申請から補正、許可書のダウンロードまでDIPS2.0で完結できるよう案内しています。
また、DIPS2.0の操作マニュアルでは、飛行開始予定日の少なくとも10開庁日以上前に申請書類を提出するよう案内されています。測量案件では現場日程が先に決まりがちですが、法務・運航側の準備時間も見込んだスケジュールにしておくほうが安全です。
立入管理措置まわりで見るべきポイント
DIPS2.0上では、飛行リスクの緩和措置として、立入管理措置を講じるかどうか、どの方法をとるかが論点になります。一般のカテゴリーII飛行では、補助者の配置、立入禁止区画や立入管理区画の設定などが関係します。
一方、レベル3.5飛行関連の電子申請では、国土交通省資料上、立入管理措置に関する設問に「航空局と事前調整済みの立入管理措置を講じる(レベル3.5飛行関連)」という選択肢と、航空局管理番号の入力項目が用意されています。つまり、レベル3.5飛行は、通常の申請とまったく別物というより、「事前調整済みの条件で立入管理をどう代替するか」をDIPS上でも明示する設計です。
ただし、DIPS2.0の画面項目や文言は更新されることがあります。画面の説明だけをうのみにするより、事業者がどんな区画設定と安全条件を前提に申請しているのかを確認するほうが実務的です。
発注者は申請画面そのものより内容を確認する
発注者が本当に見るべきなのは、DIPS2.0の細かな操作手順そのものより、申請内容の中身です。例えば次の点を確認すると、運航計画の質を見極めやすくなります。
- 今回の飛行はどのカテゴリーに当たるか
- 飛行経路下の立入管理区画はどう設定するか
- 第三者が近づいた場合の停止・着陸・経路変更のルールは何か
- 道路、鉄道、家屋などリスク要素にどう対応するか
- レベル3.5飛行を使うなら、どの条件を満たしているか
申請を「出しているかどうか」だけではなく、申請の前提条件まで共有してもらうことで、発注側も現場リスクを把握しやすくなります。
ドローン測量の発注前に確認したいポイント
立入管理措置は運航者の専門領域ですが、発注者が事前に数点を確認するだけで、現場の安全性と説明の納得感はかなり変わります。
第一に確認したいのは、今回の飛行がどのカテゴリーに当たり、その判断理由が何かです。人口集中地区、目視外、近接飛行など、どの特定飛行に当たるのかが整理されていれば、後の説明も理解しやすくなります。
第二に、飛行経路下の管理方法です。補助者を置くのか、区画を設けるのか、周辺への周知をどう行うのか、第三者が近づいたときにどう止めるのかまで確認すると、単なる形式的な申請ではないかを見極めやすくなります。
第三に、道路、鉄道、家屋など、第三者が入り込みやすい要素が経路に含まれていないかです。含まれる場合は、通常運用で避けるのか、時間帯や経路を調整するのか、レベル3.5飛行の枠組みを使うのかまで確認すると安心です。
第四に、必要に応じて操縦者技能証明、機体認証、保険加入、DIPS2.0申請や飛行計画の通報など、法令上の準備がどう整理されているかです。発注者が自分で申請する必要はなくても、説明を受けて理解できる状態にしておく価値はあります。
まとめ
ドローンの立入管理措置とは、飛行経路下に第三者が入らないように現場を制限または管理する考え方です。ドローン測量の発注者にとっては、単に許可申請の有無を確認するのではなく、「第三者上空にしないためにどんな現場設計がされているか」を見ることが重要です。
特に、人口集中地区、目視外飛行、近接飛行、道路や家屋を含む現場では、この考え方が運航計画の中心になります。また、レベル3.5飛行は便利な制度ですが、立入管理措置そのものが不要になるわけではなく、補助者や看板による管理を機上カメラ等で代替する考え方だと理解しておくと誤解が少なくなります。
発注前には、飛行カテゴリー、第三者の考え方、立入管理区画の設計、第三者接近時の対応、道路・鉄道・家屋の扱いまで確認しておきましょう。その確認ができている会社ほど、測量精度だけでなく運航の安全管理まで含めて任せやすくなります。


